トルソ

トルソ [DVD]
『トルソ』


顔も手も足も無い人形=トルソを拠り所に生きる姉(渡辺真起子)と、正反対の性格を持つ奔放な妹(安藤サクラ)が共に過ごしたひと夏の物語。

この二人は『愛のむきだし』でも共演してたね。
二人とも全く違く役柄を演じていたので女優って凄いなぁと再確認しました。


人形に恋をするという点で『ラースとその彼女』や『空気人形』と比較されがちじゃないかな、と思いながら観始めたのですが比べるような映画ではありませんでした。その二つの映画はクスッと笑えるシーンもあり、ファンタジックなシーンもあり…というものだったのに比べ、こちらは一貫して現実。心の闇、孤独。そして姉妹間(この映画での姉妹は父親違いですが)の不穏な空気がとてもリアル。姉妹の喧嘩シーンなんか特に自分の経験と重ねられた所為かリアルすぎてちょっと怖かった。


一番印象に残ったのは主人公がトルソと海で戯れるシーン。

ファンタジーじゃないからトルソが動き出すことはない。
そんな手足も表情もないトルソを抱きかかえて海に入る彼女の幸せそうな顔といったら…!
きっと彼女の頭の中は現実から逃避している。
誰にでも覚えがあるのではないでしょうか。
本や音楽、インターネットなどで現実逃避し、脳内麻薬を出して喜びを見出す経験。
しかし現実の人間と接しないと世の中って上手く回らない。不思議なもんよね。


ラストで孤独な彼女はどのような選択をするのか。
いつまでもトルソに身を委ねて自分の内面世界で生きていくのか、本当の現実で生きるのか。
良い映画でしたので是非。